精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

百寿社会をどう生きるかー第19回抗加齢医学会ー

この週末は、横浜で開催されている抗加齢医学会に参加しています。

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抗加齢医学会は、様々な科の先生方が最新の知見を発表されるため、専門外の内容も多く、非常に興味深い学会です。抗加齢医学会専門医ということもあり、自分の知識が狭くならないためにも、必ず参加するようにしています。

 

現在100歳を超える人は約7万人弱です。将来的には2007年に生まれた子供の約半分が100歳まで生きると予想されています。

長寿は素晴らしい事ですが、少子高齢化、年金、病気、寝たきり、認知症、介護・・・問題は尽きません。

長寿社会における幸福とは何か。「死ぬまでずっと幸せでいたい」それが、究極の願いかもしれません。学会会長である伊藤裕先生(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授)は「健康寿命」ならぬ「幸福寿命」を提唱されています。「幸福寿命」の延伸に「抗加齢」の本質があると述べられています。

「幸福」の定義は人それぞれでありますが、「幸福」を実現するためには、心身の健康を保つことが必要不可欠です。「老化」を科学し「心身の健康」に誘う、それがこの学会の専門医の努めかもしれません。

 

今回の学会では「老化」に関しては、「糖化(AGEs最終糖化産物)」、「心身の健康」に関しては「腸内細菌」「ミトコンドリア」「ホルモン」が大きなテーマであったように思います。

体内に入った過剰な糖とタンパク質が結び付いたものが「AGEs」です。これは老化関連疾患(認知症加齢黄斑変性症、糖尿病合併症、動脈硬化、肌のくすみやしわなど)との関連が報告されています。高血糖に注意することはもちろん、高温で調理した炒め物や揚げ物を食べる事も、外から体内にAGEsを取り込んでいることになります。

腸内細菌は近年は癌やアレルギー、肥満、うつ病などの病気の発症にも関与することがわかっています。健康の土台作りには健全な腸内細菌は欠かせません。

ミトコンドリアはエネルギーであるATPを産生します。生命活動の根源ともいえます。ミトコンドリアの機能を活性化するためには、ビタミンミネラルを十分にとること、運動やファスティング、朝日を浴びる、寒中水泳、息止めなども有効といわれています。

そしてホルモン、特に愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」は幸福な長寿に欠かせないホルモンです。オキシトシンがしっかりと分泌することで孤独感が減り、幸福感が増すと言われています。オキシトシンを増やすためには、スキンシップ、人に親切にするなどですが、犬と触れ合うことでも増加すると言われています。

 

最近の知見や研究段階の発表が多く、日常生活に落とせる内容は少なかったですが、また随時紹介していきたいと思います。