精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

糖質制限中に注意したいこと。積極的に摂りたいものを中心に。

問題なく糖質制限ができる人でも、注意しておきたいことがあります。

糖質制限をすると、脂質とタンパク質からエネルギーをとることになります。

 

 

脂質に関する注意点

脂肪は飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸は、二重結合をもたない、安定した油です。肉やバター、ココナッツオイルなどです。

不飽和脂肪酸は、二重結合をもつ、不安定な油です。植物や魚に含まれます。不飽和脂肪酸は、さらに、オメガ9、オメガ6、オメガ3に分けられます。

積極的にとりたい油は、EPA,DHA、α‐リノレン酸などを含むオメガ3系の油です。亜麻仁油やえごま油ですね。炎症を抑える作用があります。

糖質制限中に、肉の摂取が増えると、飽和脂肪酸の摂取が増えます。全ての細胞の膜は脂質でできていますが、それが飽和脂肪酸に置き換わっていきます。

飽和脂肪酸は安定しているものの、硬い油です。細胞膜も硬くなり細胞の流動性がなくなります。神経細胞は非常に影響をうけやすく、神経伝達に支障をきたします。動脈硬化の原因にもなります。

糖質制限中には、飽和脂肪酸の摂取量が増えていることを意識しなければいけません。油の多すぎる肉はそこそこにして、オメガ3系の油を積極的にとるようにしましょう。

ココナッツオイルは飽和脂肪酸ですが、飽和脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸を多く含みます。中鎖脂肪酸糖質制限中に、ブドウ糖に代わってエネルギー源となるケトン体を素早く作ってくれます。ココナッツオイルやココナッツオイルから中鎖脂肪酸のみを取り出したMCTオイルは、糖質制限中にエネルギー不足にならないために、積極的にとりたい油です。

MCTオイルの効果的な摂取の仕方は以下のブログで紹介しています。

www.sakuranbo23.com

 

タンパク質に関する注意点

前回までにお話したように、タンパク質は消化、吸収に手間がかかります。大腸では悪性菌を増やしたり、リーキガット症候群を引き起こしたりします。

良く噛んで食べる、レモンや酢の物、大根おろしなどを添えて食べるとよいでしょう。そして腸内環境を整えるため乳酸菌や食物繊維も積極的にとりたいところです。

タンパク質は消化、吸収した後も代謝に手間がかかります。糖質や脂質はエネルギーを作った後には、CとO、つまり二酸化炭素と水だけが残り、呼吸や尿から排出されます。タンパク質を代謝すると、CとO以外にN、つまり窒素化合物が残ります。これは肝臓で尿素に変えられ、腎臓から尿として排出されます。つまり肝臓や腎臓に負担がかかります。

糖質制限中にアルコールを摂取すると、肝臓にはダブルパンチで負担がかかることになります。糖質制限中は、お酒は控えめにして、肝臓をサポートしてくれるタウリンを多く含む食事をとるといいでしょう。イカやタコ、甲殻類などです。水溶性なのでスープなどにすると効果的に摂取できます。しじみの味噌汁が定番ですね。

 

その他

肉食になると、体内が酸性化します。酸性化すると骨が溶けやすくなり骨粗鬆症のリスクが上がります。肉を食べたら、酸性化を抑える食品をとらなければなりません。ひじきやわかめなどの海藻類、ホウレンソウなどの野菜、干しシイタケなどのきのこ類です。

タンパク質の摂取が増えると、オートファジーが働きにくくなる、炎症を助長して癌のリスクが増えるなどの可能性も指摘されています。

 

まとめ

糖質制限中に注意したいことは以下のとおりです。

油の多い肉はほどほどに、亜麻仁油やえごま油、ココナッツオイルやMCTオイルを積極的にとる。

お肉はよく噛んで食べる、レモンや大根おろし、酢の物を添える。

乳酸菌や食物繊維を積極的にとる。

アルコールは控えめに。タウリンの摂取も意識する。

野菜はもちろん、海藻類もお忘れなく。

 

制限されるより、摂ればよいものが増えるほうが、前向きに取り組めますね。

 

長期的なリスクも予想されますので、糖質制限は短期間にしておき、その後は「太らない体づくり」を追求していくのがよいかもしれません。

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