精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

糖質制限をしてコレステロールが高くなるのは low T3症候群

糖質制限シリーズ最後はおまけです。

先日の症例でも登場しましたが、糖質制限をしてコレステロールが高くなることがあります。脂質摂取量が増えたと思う方が多いようですが、注意が必要です。

 

甲状腺は、首にある臓器ですが、そこから出るホルモンが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンは体にとってアクセルの役割をしてくれます。代謝を上げる作用があるので、働きすぎると体重は減少し、働きが落ちると体重は増加します。

甲状腺ホルモンには、T3、rT3、T4があります。働きが強いのはT3です。働かないものがrT3です。T3がアクセル、rT3がブレーキのような働きをします。アクセルだけでは暴走すると困るので、きちんとブレーキもついてるんですね。

T4はT3にもrT3変換されますが、体が弱った状態の時には、T4→rT3 への変換の割合が増えます。飢餓状態や、外傷、手術後などです。体が一旦ブレーキを踏んで、休止モードに入るようにできています。これが low T3症候群です。

 

前回までに述べたように、糖質制限をして、タンパク質や脂質からうまくエネルギーを作り出せない場合は体が飢餓モードに入ります。そうすると、T4→rT3への変換が進み、甲状腺の機能は低下します。

 

甲状腺機能が低下すると、寒がりになり、思考力や記憶力も低下します。便秘や浮腫みなどもでてきます。そして代謝が落ちるため体重は増加傾向になります。

甲状腺ホルモンは、コレステロールの受容体の増産体制を強化し、血中のコレステロールを抹消組織に取り込ませ、脂質の分解を促進させる作用があります。

甲状腺機能が低下すると、コレステロールが組織に取り込まれなくなり、血中に滞ってしまします。こうして血中コレステロールの値が高くなります。

 

ダイエット目的で糖質制限を始めたのに、代謝が落ちて太りやすくなってしまうというパターンです。

やはり、自分が糖質制限に向いているのか、見極める必要がありますね。

 

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 参考文献:海場書房 STEP内科