精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

糖質制限してはいけない人②

前回の続きです。

 

 

では前々回に紹介した、糖質制限をして調子が悪くなる人の症例の解説をしたいと思います。

甘いものやパスタが大好き、細身で筋肉が少ないA子さん。これまでストレス解消は、友人とのスイーツ巡りでした。

→甘いもやパスタが好きということは、もともと主に糖質からエネルギーを確保しており、明らかなタンパク質不足が伺われます。

そしてリーキガット症候群(前回にでてきた腸漏れ症候群、スカスカの腸のことですね)の原因は、小麦グルテンや糖質過多な食事があるので、リーキガット症候群の可能性もあります。リーキガット症候群ではガンジダというカビの一種が増殖している事が多く、ガンジダは糖分を欲するため、甘いものがやめれなくなります。

 

最近流行りの引き締まった美ボディを作るために、ジムに通い始めました。そこでトレーナーさんに筋トレとプロテインの摂取、糖質制限をすすめられ、さっそく開始しました。
お肉中心の食生活、ジムの前後ではプロテインという生活になりました。

→これまでのエネルギー源であった、糖質が遮断され、大量にタンパク質が入ってくるようになります。


しかし、数日後には、何だか疲れやすくなってきました。お腹が張ってごろごろします。おならや便の臭いもきつくなってきました。

→タンパク質不足、仕事のストレスなどで慢性的に胃酸の分泌が低下していたために、タンパク質をうまく分解できません。タンパク質が分解されずにそのまま腸管に入り、悪性菌を増殖させ、腸を荒らしてしまいます。そしてリーキーガット症候群があるため、未消化のタンパク質が、腸壁の隙間から血中に入り込みます。その結果、遅延型フードアレルギーの症状である疲労感などが強くなっています。腸内では徐々に炎症が強くなります。

これは前回のブログで説明した部分ですね。


内科を受診し、血液検査をしてみるとなぜかコレステロールが高値に。

→糖質が急に供給されず、タンパク質も吸収できない体は飢餓モードに入り、甲状腺の機能を低下させます。甲状腺の機能が低下すると、コレステロールが上昇します。


それからは脂肪も抜かないといけないと思い、脂肪も控えるようになりました。

→更に脂質の供給までストップして、いよいよ体は危機状態になりました。しかし長年仕事のストレスがあるところに、腸の炎症が悪化しているので、過剰に働き続けていた副腎が悲鳴をあげて、働けなくなります。

 

その後は、夕方にはふらふらして動悸や冷や汗もでてくるようになりました。

→副腎の機能が低下したところに、エネルギーの供給が遮断され、夕方を中心に低血糖を起こし、動機や冷や汗の症状がでてきます。

 

夜は何度も目が覚めてぐっすり眠れません。

→夜間も低血糖が生じるようになります。夜間の低血糖は睡眠の質を低下させ、頻繁に中途覚醒を引き起こします。

 

とうとう仕事にも支障がでるようになり、心療内科を受診するはめになりました。

睡眠薬抗不安薬を処方されても、根本原因の解決にならずに、治療が長引くことになります。

 

ではA子さんはどうしたら良いのでしょうか?

まずは低血糖にならないように、こまめに少量の炭水化物をとります。

タンパク質を消化、吸収できる体にするために、腸内環境の改善にとりくまなければなりません。そして胃酸などの消化酵素がしっかりと出るようになるまでは、タンパク質を摂取する時には消化酵素を飲んだり、吸収可能なアミノ酸の形で摂取することです。レモンや梅干し、酢の物も胃酸の分泌を促してくれます。

 

糖質に偏った生活をしていた人、胃酸の分泌が低下している人、もともとタンパク質不足の人、リーキーガット症候群の人、重度の副腎疲労の人は、極端な糖質制限は、更なる体の不調をもたらす可能性があります。まずは糖質も一定摂取しながら、体の調子を整えることが優先です。

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