認知症の予防は40歳から
今日は日本認知症予防学会の専門医教育セミナーを受講してきました。
現在、認知症の原因と言われているアミロイドβの蓄積は、発症より20~25年前には始まっています。
従って、予防が早すぎるということはありません。100年ライフを生きる私たちは、誰もが40歳を過ぎたら認知症の予防を考えるべきなのかもしれません。
認知症の原因として、一般的な内容と、分子栄養学的な視点からいえることをお伝えします。
一般的にはアミロイド仮説、コリン仮説、グルタミン酸仮説などがあり、これにより抗認知症薬の開発が進められています。
アミロイドカスケード仮説
現在最も有力な説です。
シナプス(神経細胞)の膜表面に存在するアミロイド前駆蛋白質が、βセクレターゼ、続いてγセクレターゼで切断され、アミロイドβが産生され細胞外に蓄積します。不溶型のアミロイドβが蓄積することで、シナプス障害そして異常リン酸化タウによる神経細胞毒性が引き起こされ、神経細胞死を引き起こし、神経原線維変化をきたすとする説でです。
現在はこの説に基づいて、様々な薬の開発が行われています。
βセクレターゼ阻害薬、γセクレターゼ阻害薬、抗アミロイドβ抗体薬、アミロイドβワクチン療法、抗タウ抗体薬、タウワクチン療法などです。しかしいずれも開発段階や臨床試験で立ち止まり、実用化には至っていません。
コリン仮説
コリン作動性神経伝達物質(アセチルコリン)の減少が認知機能障害を引き起こしているという説です。
認知症患者でアセチルコリンの低下があることは間違いなく、現在臨床で用いられている、抗認知症薬、アリセプトやレミニール、リバスタッチなどはコリンエステラーゼ阻害薬であり、一定の効果が認められています。
しかしこれらの薬の効果が頭打ちするということは、アセチルコリンの低下は原因ではなく、結果として起こってくる現象にすぎず、これらの薬はほんの一部の対症療法にすぎないということでしょう。
グルタミン酸仮説
グルタミン酸は脳内の主な興奮性神経伝達物質で、その受容体の一つにNMDA受容体があります。NMDA受容体は大脳皮質や海馬に多く分布し、記憶に関する長期増強などの役割を担っています。アルツハイマー型認知症の記憶障害の一部にはこのグルタミン酸ニューロンやNMDA受容体の障害が関与されていると考えられており、現在認知症治療薬として認可されているメマリーはNMDA受容体拮抗薬として、NMDA受容体の過剰な興奮を抑えることで記憶障害や認知症のBPSD(行動心理症状)を改善させることが期待されています。
しかしこれらの仮説では、私たちはどのように認知症を予防していいのかがわかりません。
そして現在使用されている薬や開発されている薬は、アルツハイマー型認知症が発症する過程の下流部分に対する薬のみです。
ではアミロイドβができる原因から根本的に予防する方法はないのでしょうか。分子栄養学ではそれを可能なものにしてくれています。
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分子栄養学実践講座の宮澤賢史先生が熱烈におすすめしていた書籍です。
これによると、アミロイドβは脳の防御反応の結果として蓄積されます。この防御が慢性的になると強力になり一線を越え、アルツハイマー型認知症の発症へ向かうわけです。
そして、この防御反応を引き起こす原因となるのが、以下の3つです。
①炎症
②栄養因子の不足
③有害金属や生物毒素(カビなど)などの有害物質
炎症は以下のブログでうつ病の原因にもなることをお伝えしました。認知症とうつ病の関連も指摘されているので、認知症も炎症が関連していることはうなずけます。
栄養素はビタミンやミネラルなど、脳が機能するために必要な栄養素です。
有害金属は以前に取り上げた水銀などです。カビを発生させないことも、認知症予防のために大切なことなんですね。
これらの3つは分子栄養学の最大のテーマです。栄養学を学んで実践することの集大成は、認知症を予防することのように思えます。
今後もこのブログでさらに詳しくお伝えしていこうと思います。
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