精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

双極性障害の話

双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。

 

その違いは簡単に言うと、躁病エピソードがⅠ型は躁状態、Ⅱ型は軽躁状態ということです。この二つは「程度の差」ではなく、病態が異なると捉えた方がよいです。

 

Ⅰ型の場合、躁状態になった際には、ほぼ確実に入院が必要になります。

躁状態では、本来のその人がするはずのない問題行動を次から次へとやっていまいます。上司に喧嘩をふっかけたり、財産を使い果たしたり、莫大な借金をしたり、浮気をしたり。病気であったとしても「取返しのつかない行為」をしていまうのがこの病気です。入院は治療のためでもありますが、何より「取返しのつかない行為」を阻止するためでもあります。その人の尊厳を守る事と、被害を最小限にとどめる事が、治療のポイントの1つだと考えます。これそ阻止できないと、その後に訪れるうつ状態で、これらの行為を後悔し、自責の念にかられ、追い討ちをかける事になります。

 

II型の軽躁状態では、必ずしも入院は必要ありません。いつもよりテンションが高い、良く喋る、アイデアが次々思い浮かぶ、といった状態になります。周囲も、元気でよく動き、よく働くなどで容認することもあります。

本人も元気で何でもできるこの状態が本来の自分と考え、この状態を希求してしまいがちです。ここがII型の治療を難しくさせる1つの要因です。

ではなぜこの状態を予防しないといけないのでしょうか。

それは「躁状態は持続可能なパフォーマンスではない」からです。これは双極性障害の人だけでなく、家族や職場の人も覚えておかなくてはなりません。

躁状態の後には、ほぼ必ずうつ状態がやってきます。動きすぎた故、その後に長い長いうつ状態に突入することが多々あります。

II型は、多くの期間をうつ病相で過ごすと言われています。双極性うつの治療は未だ確立されておらず、治療は容易ではありません。この点からも治療者は、患者さんに嫌がられつつも軽躁に注意を払います。

再発を予防するためには、患者さんも周囲も、これらの事をよく理解し、受け入れる必要があります。

双極性障害では適切な心理教育を受けた人の再発が少ないというデータもあります。

うつ病学会のHPに心理教育の資料があるので載せておきます。

 

https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/ippan/shiryo.html

 

Ⅰ型の再発予防に対して薬物療法は非常に有効です。

Ⅱ型はI型に比べて薬物療法の有効性は劣ります。Ⅱ型は過眠、過食や不安症を合併する事が多いので、病態が複雑になりがちです。

症状や合併症をみると、Ⅱ型は栄養療法で取り扱う、低血糖症や副腎疲労や過緊張の問題などがかなり関与しているとも言えます。

私はⅡ型は特に、疾病の心理教育だけでなく栄養療法が重要だと考えています。

 

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