精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

うつ病はコレステロールに注意

うつ病の患者さんに血液検査をすると、コレステロールが低い人が非常に多くみられます。私が栄養療法を勉強するまでは、食欲が低下している結果だろうという程度にしか考えていませんでした。

うつ病の人のコレステロールが低下するメカニズム、その結果、うつの症状を強化している悪循環についてお話ししたいと思います。

 

脂質はタンパク質のトラックに乗って血中を運ばれています。このタンパク質に乗った脂質をコレステロールと考えてください。コレステロールが上がる原因は様々ありますが、下がる原因は、殆どがタンパク質不足です。

 

うつ病の患者さんは初期の段階でおそらく強いストレスにさらされています。ストレスにより胃酸分泌は低下し、タンパク質の分解、吸収ができなくなります。そうなると肉を食べると胃もたれするようになり、タンパク質の摂取量も低下します。そこにうつ病の症状である、食欲低下も重なって、深刻なタンパク不足になります。

その結果コレステロールは低値になります。

コレステロールが低下するとどういう影響がでるのでしょうか。

コレステロールは胆汁、CoQ10ビタミンD、細胞膜、コルチゾール、性ホルモンなどの材料です。コレステロールが低下すると、これらの物質が低下することになります。

胆汁が低下すると、油の吸収が低下するため、脂溶性ビタミンであるビタミンA,D,E,Kの吸収が低下します。

CoQ10ミトコンドリアの中でエネルギーを作り出す働きに関与しているので、低下によりエネルギー不足になります。

細胞膜が新しいものに置き換えられなくなると、硬くて柔軟性が乏しくなります。神経伝達も不良になり頭の働きが鈍くなります。

コルチゾールは正常では朝に多く分泌され、体内リズムを司る一因となりますが、低下することで、朝起きにくくなります。

性ホルモンが低下すると、性欲の低下や不妊などを引き起こします。

つまり、うつの症状である疲労感、思考力の低下、朝が特にしんどい、性欲の低下と見事に一致しています。

うつの症状が、コレステロール低下によるとまでは言いませんが、症状を増強し、回復を妨げる原因にはなっていそうです。

ではどのように対策をすればいいでしょうか。

まずはコレステロールの薬を漫然と服用していないかチェックします。昔、高コレステロールがあり処方されたのを機に、低コレステロールになっても飲み続けている人は意外とたくさんいます。

タンパク質を吸収を促進するために、タンパク質を摂取する際には消化酵素を飲む、吸収しやすいアミノ酸の形でとる(ボーンブロススープなど)ことがおすすめです。

そしてコレステロールが正常化するまでの応急処置として、CoQ10やビタミンⅮをサプリメントで摂取するとよいでしょう。そうすれば、ぐったりと動けなかった人が、何とか動けるようになる事があります。

 

うつ病の治療は薬物療法、精神療法、休職などの環境調整がありますが、栄養療法を学ぶ事で更に多角的にアプローチできるようになると感じています。

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