精神科女医の健康談義

精神科医の立場で精神科医療や栄養療法、漢方治療などについてわかりやすくお伝えしています。

従来のうつ病の治療と分子栄養学のうつ病の治療

 

 

精神科でのうつ病治療

精神科ではうつ病の治療は「モノアミン仮説」に基づいて行われています。

「モノアミン仮説」とは、神経伝達物質である、セロトニンドパミンノルアドレナリンなどのモノアミンが不足することによって、うつの症状を生じているというものです。

したがって治療では、脳のシナプス間のセロトニン濃度を上げる、SSRIセロトニン再取り込み阻害薬、パキシルやレクサプロ)や、セロトニンノルアドレナリンの濃度をあげる、SNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬、サインバルタイフェクサー)という薬を用います。

しかし、約3割の患者さんは抗うつ薬に効果を示さないと言われています。

 

分子栄養学でのうつ病治療

分子栄養学ではこの部分を説明可能なものにしていくれています。

分子栄養学では、精神疾患を脳の生化学状態により分類し、脳の生化学的なアンバランスを整えることで治療します。

うつ病の患者さんは、症状と血液検査などによって、低メチレーション葉酸欠乏、銅亜鉛バランス、ピロール異常、重金属に分類され、補うような治療をします。(分類や治療に関しては長くなるので、今回は割愛します)

例えば、低メチレーションの人は、完璧主義で負けず嫌いな人が多く、SSRIに効果を示すという特徴があります。葉酸欠乏の人は、不安が強くパニックを起こしやすい、セロトニンは多いので、SSRIを服用すると逆に衝動性や攻撃性が出ることがある、という特徴があります。

メチレーションの人は、うつ病の38%と報告されているので、先ほどの抗うつ薬に効果がある人が3割、という値と概ね一致します。

SSRIの副作用にactivation syndrome というのがあり、特に服用初期に、不安、焦燥、不眠、衝動性などが出現することがある、と注意喚起されています。これもSSRI葉酸欠乏タイプの人に使った場合と考えると説明がつきます。

 

 

脳は栄養の影響を受けやすい臓器です。

実臨床をしていると、予想される結果にならないこともありますが、分子栄養学の考えを頭に置いておくと、非常に治療の幅が広がるように思います。

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参考文献:NUTRIENT POWER  William.J.Walsh